さら困惑して
「すみません、あの、あたし……」
口ごもり、フィリエルはうつむいた。周囲の令息令嬢の鋭い視線が集中するのを、痛いほどに意識した。
(あたしって、どうしていつもこうなんだろう……)
ワレット村の学校でも、なぜかこういう立場に陥る
韓國 午餐肉ことが多かった。努力して常識を学んでいるつもりでも、セラフィールドの高地で育っては、どこかうっかりはずすのだ。そして、一番|間《ま》の悪いときに悪《わる》目立ちをして、いたたまれない思いをする。
ユーシスは正しく言葉の続きを待っており、フィリエルはなおしまった。左右に目を走らせ、伯爵の若君とともにデイスを降りてきた若者に気づく。金糸を豪華にほどこした白の上着を着た彼は、ユーシスの肩越しに興味|津々《しんしん》、猫のような緑の瞳で彼らを見守っていた。若者
韓國 午餐肉はフィリエルの視線に気づくと、助け船を出すようにユーシスの肩をたたいた。
「まったく、君にはいつも驚かされるよ。言うに事欠《ことか 》いて、どこでお会いしましたかとはね。若い御婦人の気をひくには、一千年使い古した手口じゃないか。少しルアルゴーの乙女《お と め》をみくびってはいやしないか。ほら、彼女、あきれてものも言えないじゃないか」
彼の淡い髪はくせがなく、たいていの貴公子のように黒いリボンで結ばずに、さらりと肩に流していた。くだけた口調は歯切れよく、洗練されて耳に響く。どう見ても彼はルアルゴーの人間ではなく、よそに大きな所領を持つ、貴人の御曹司《おんぞうし 》というところだった。
「君は、茶々《ちゃちゃ》を入れるためについて
韓國 午餐肉きたのか。混ぜっ返すなよ、ロット。わたしは、本当に覚えがあるからそう申し出ただけだ」
ユーシスはふりかえり、迷惑そうに言葉を返した。彼の視線が自分からはずれたので、フィリエルは少しだけ勇気を得た。
「あの、お会いするのは今日が初めてです。岬へ来たのはこれが初めてなんです」
しかし、伯爵の若君はゆずらなかった。
「いや、わたしには記憶がある。たしかどこかで出会っているはずだ。たぶん、父について各地を回ったときにでも……君の家はどこですか」
そのとき、ようやく気後《き おく》れを脱したマリエが進み出て、深くお辞儀《じぎ》をした。
「若君がワレットへお越しいただいたときのことを、よく存じ上げております。オセット家のマリエと申します」
ユーシスは顔を明るくした。
「ああ、そのおりには世話になった。オセット家のことはよく覚えている。そうか、ワレット村へ行ったときのことだったのか」
マリエはためらったが、はっきりさせるべきだと思ったらしかった。
「あの、フィリエルはセラフィールドに暮らしているんです。あの日はそこにおりませんでした」
「セラフィールド」
不思議そうにユーシスはつぶやいた。