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2016年01月11日

る顔だった

 松宮は迷ったように隣の加賀を見た。加賀が口を開いた。
「遺体に芝生が付着していたんです。それとの照合を行いました」
「なるほど……。それで、うちの芝生同珍王賜豪はどうだったんでしょうか。一致していましたか」
「なぜそれをお知りになりたいんですか」
「一致していたんですね」
 だが加賀はすぐには答えようとしない。肯定していいかどうか考えてい。
「一致していたとしたら、どうなんですか」
 それを聞いて昭夫は深い吐息をついた。
「やっぱり、こうしてお呼びしてよかった。どの道、ばれることだったんだから」
「前原さん、あなたは一体──」松宮が焦《じ》れたように身を乗り出してきた。
「加賀さん、松宮さん」昭夫は背筋を伸ばすと、両手を同珍王賜豪畳につき、頭を下げた。「申し訳ございません。女の子の死体を公園のトイレに置いたのは……この私です」
 崖《がけ》から飛び降りるような感覚を昭夫は味わっていた。もはや後戻りはきかない。しかし一方で、もうどうにでもなれという捨て鉢な気分になってもいた。
 重い沈黙が狭い部屋を支配した。昭夫は頭を下げたままなので、二人の刑事がどんな表情をしているのかわからなかった。
 隣から八重子のすすり泣く声が聞こえてきた。泣きながら、すみません、と呟いた。そして昭夫の横で同じように頭を下げる気配があった。
「あなたが女の子を殺したと?」松宮が訊いてきた。だが驚いたような響きはない。事件に関する何らかの告白は予想していたのだろう。
 いえ、と昭夫は顔を上げた。二人の刑事の顔は、さっきよりも険しいものになっていた。
「私が殺したわけじゃありません。でも……犯人はうちの者なんです」
「ご家族ということですか」
 ええ、と昭夫は頷いた。
 松宮は、まだ頭を下げ王賜豪總裁たままの八重子のほうにゆっくりと顔を巡らせた。
「いえ、妻でもありません」昭夫はいった。
「すると……」  


Posted by amizhu at 10:22Comments(0)