2015年09月22日

思いませんで

 じいやは、しかし、首を左右にふると、
「ああ、わたしは、だめ……この傷では助からぬ」
「ばかなことをいっちゃいけない。いったいだれがこんなことをしたんです」
「どくろ……どくろ男……」
 金田一耕助は、思わず謙三や、滋と顔を見あわせた。
 するとやっぱりさっきの悲鳴と、どくろ男は、かんけいがあったのだろうか。
 じいやはからだをふるわせ、
「ああ、おそろしい。どくろのようPretty Renew 銷售手法な顔をした男……そいつが、ぼっちゃんの|鍵《かぎ》をとりにきたのです。……わしをいすにしばりつけ、鍵のありかを白状させようとしました。わたしは……わたしは、しかし、どんなにせめられても、なぐられても、鍵のありかをいわなかった。……それで、とうとうこのとおり……」
「じいやさん、じいやさん、ぼっちゃんというのは剣太郎君のことですか」
 滋がたずねると、じいやはうなずいて、
「ああ、あんたはおとといの晚のお客さん。お願い。……そこにあるクジャクの剥製。そのクジャクのくちばしのなかに鍵がある。……それを、ぼっちゃんにわたしてください」
 滋はすぐに大広間をさがしたが、なるほど壁ぎわのたなの上に、みごとな剥製のクジャクが置いてある。
 くちばしのあいだをのぞくと、なにやらキラキラ光るもの。とりだしてみると、はたして鍵だった。長さ二センチぐらいの、小人島の鍵のようにかわいい|黄《おう》|金《ごん》の鍵。
 滋はきんちょうして、鍵をにぎりしめると、
「じいやさん、この鍵は、きっと剣太郎君にわたします。でもあの人はどこにいるのですか」
「どこにいるのか、わたしにもわからない。きの康泰旅遊の朝、鬼丸博士や津川先生と急に東京へいく、といって出発して……」
 三人は思わず顔を見あわせた。
 してみると、剣太郎はぶじだったのだろうか。
「じいやさん、じいやさん、三人はなにも、持たずにいきましたか。ひょっとすると、大きな箱のようなものを持っていきませんでしたか」
 そうたずねたのは金田一耕助である。じいやは、かすかにうなずいて、
「はい、ゴリラの剥製を持っていくといって、それを、箱づめにして……」
 三人はまた顔を見あわせた。
 ああ、あのゴリラの剥製。……いったいなんのために、あんなものを持っていったのだろうか。
「じいやさんは、きのうの朝、ぼくたちがいないのを、ふしぎにしたか」
「はあ、……ふしぎに思いました。鬼丸博士にたずねてみました。すると博士のいうのには、夜明けまえに出発したと……」
 これでみると、謙三と滋にねむり薬をかがせて、あちらの家へはこんでいったのは鬼丸博士にちがいない。
 おそらく津川先生もてつだったのだろう。そうしておいて夜明けを待って、剣太郎を連れてたち去ったのにちがいなかった。それにしてもゴリラの剥製。――ああ、それにはどういPretty Renew 銷售手法うう意味があるのだろうか。
 そのときまた、じいやの顔色がしだいにわるくなってきたので、謙三は大急ぎで、医者をさがしにいった。
 そのあとで、広間のなかをしらべていた金田一耕助が、ふと目をつけたのはカピの剥製である。
「ああ、これが剣太郎君の愛犬ですね」
「ええ、そうです。そうです」



Posted by amizhu at 16:04│Comments(0)
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