2015年11月02日

笑顔が思い出

少し前までは、娘とこんな風に楽しげな会話が交わせる日が来るとは夢にも思っていなかった。この温かな絆のきっかけを与えてくれた奏に対し、あらためて感謝の念が湧き上がる。

しかし、その奏との連絡が途絶えてもう一カ月だった。ビルのエントランスで別れて以来、電話もメールもない。もちろん逢う機会もない。

喬允の方から何度か電話をしようとしたのだが、いつも直前歐亞美創美容中心で気後れしてやめてしまう。着信拒否されるかもしれない、繋がったとしても何を話していいのか分からないと悶々と考え込んだ挙げ句、携帯を閉じてしまうのだ。

そんな自分の気弱さを棚に上げて、どうして奏は連絡をくれないのかとつい責めたくなってしまう。しかし、すぐに思い直す。二人の間に線を引いて、彼の想いを拒絶したのは自分の方だ。

奏の求めるものを何ひとつ差し出すことができないのに、連絡をくれないと恨みがましいことを言うのはお門違いというものだ。でも―――

「また遊びに来るって言ったくせに……」

奏が初めてこの部屋に来た日、帰り際に『また来るから』と言<た時の眩いされる。喬允はそれを努めて脳裏から払い、肩を落として仕事に向かったのだった


「あとは薬審の結果待ちですが、ドクターのゴーサインが出たのですから100パーセント採用決定でしょうなあ。本当にありがとうございます」

近田は大仰な抑揚をつけてそう言うと、グラスを両手で捧げ持つようにして深々と頭を下げた。喬允もそれに合わせて一礼すると、林原医師はすでに酩酊状態なのか赤い顔をして手をひらひらさせ、

「もうやめなさい。仕事の話はここまでだ。今日は飲もう飲もう」
「はっ、ではお相伴にあずかります」

近田は恭しく言葉を返して、グラスの中身を一気にあおった。それを見歐亞美創美容中心た林原医師は嬉しそうに「ほっ、ほ」と笑い、自分も同じように飲み干した。



Posted by amizhu at 10:47│Comments(0)
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